趣味の暗号解読 黄金虫
エドガー・アラン・ポーの『黄金虫』を久し振りに再読した。初めて読んだのは今から半世紀以上も前のことであり、原文と訳本両者を読んだ記憶がある。残念ながら、両書とも今手元に無い。あるのは創元文庫の『ポオ小説全集4』に収録されている、丸谷才一氏の訳である。
原書は無いが、有難い事に、『Gold Bug』で検索すれば、フリーの原文が山ほど出て来るのである。邦書にしても青空文庫で、佐々木直次郎氏訳がダウンロードすることが出来るのであるから、いい時代になったものだ。
翻って現在の暗号を見てみると、専門家ではないから詳しいことは分からぬが、まさに応用数学となっていて、とてもその暗号化のアルゴリズムそのものを、推理小説に組み入れるというのは甚だ困難だろうと思う。やはりクラッシックな暗号でないと、小説には向かぬのだろう。本格的な現代暗号のアルゴリズムそのものを扱った、推理小説については寡聞にして聞かない。その点が老生については不満なところである。
下の引用の梗概にもあるように、初の本格的暗号小説であるから、若かりし頃の老生も、胸躍らせて暗号の神秘に触れつつ、その理詰めの解読経過に驚嘆したものである。当時老生は、ユークリッド幾何学にはまっていて、公理から理詰めで定理を証明するその醍醐味に魅せられていたから、この種暗号の解読に惹きつけられるという素地は十分にあったわけだ。
暗号の知識が皆無であったから無理は無いのだが、暗号の形式は『単文字換字暗号(Simple Substitution Cipher)であるから、出現頻度についての知識と、文脈、あるいは状況に関する知見とから、今で言うパズル的に解くことが出来、当時としては実に面白い知的ホビーとなるものであった。
【引用始め】(ウィキペディア(Wikipedia)から引用)
「黄金虫」(こがねむし、おうごんちゅう、原題:The Gold Bug)とは、エドガー・アラン・ポーによる推理小説である。1843年6月に Newspaper で発表された。
初の暗号小説としても有名であり、ドイル(「踊る人形」)や乱歩(「二銭銅貨」)に影響を与えた。
概要
作者は、暗号に詳しく、1839年から Alexander's Weekly Messenger で読者に「どんな暗号文でも解読してみせる!」と宣言し、その後、数ヶ月に渡って寄せられた、読者からの投書に回答を与え続けたという。また、その様子が Graham's Magazine にて「暗号論」なるエッセイ(1841年)で紹介されている。
その2年後に「黄金虫」は発表された。作者の暗号解読の知識と経験を元にした、解読できない暗号文は無い、という主張が具体的に分かり易く展開されている。
19世紀中頃において、暗号がどう理解されていたのかの一面を知ることができる。
要約
名門の生まれながら落魄し隠遁生活をしている主人公はある日、黄金色をした珍しい甲虫を発見した。それを友人である小説の語り手に告げるが、その途中から様子がおかしくなる。その後、主人公は部屋に篭ったままろくに食事も睡眠もとらなくなり、召使によるとその虫を本当に黄金でできていると思いこんでいるとのことで、心配した語り手は主人公にどこかで療養するように説得に行く。それを聞いた主人公は大笑いして、「僕は気が狂ったのではない、キャプテン・キッドの財宝を見つけたんだ」と告げる。以下、暗号の謎が解き明かされる。
登場する暗号文は、火で炙ると現れる隠し文字が単純な換字法を用いて暗号化されているもので、英語文の文字や単語の出現頻度から解読を進める手順が良く解説されている。
意外な暗号の隠し場所とオーソドックスな暗号解読の推理小説的要素に加えて、この時代に流行した隠された財宝を探す冒険小説的要素も含んだ佳作である。
【引用終わり】
どうも歳のせいか、最近とみに懐古趣味に陥ることが多くなって来た。しかし暗号などの場合、クラシックなものを解いてみるのは、今流行の脳トレにもなるのではないかと、自己弁護にこれ努めている次第である。
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